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アルヴァ通信

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ホロウデルから28年、盆地協定はなぜ生まれたのか

新暦98年、ホロウデルで起きた爆発は三国を盆地協定へと向かわせた。現ギルド長ハルド・ベルクが、あの日の記憶を語る。

クロスロードを北東へ進んだ先、崩れた石壁の向こうに、今も錆び付いた巻上げ機が残されている。ホロウデル――かつてのこの魔石採掘場は、28年前には最も危険な場所だった。ここで起きた一度の爆発が、この地の歴史を大きく変えることとなったのである。

一触即発の採掘場

新暦98年、長く人を拒んできた盆地の魔力は、ついに富へと変わった。魔石の相場が一気に跳ね上がり、半世紀近く盆地の縁で小競り合いを続けてきた三国は、こぞって採掘地へと押し寄せた。

盆地の探索が始まって間もなく、アイゼン連合王国の坑夫たちがホロウデルに坑道を開削する。だが、旧帝国の継承者として盆地全体の領有を主張するオルデリア王国はこれを認めず、部隊を送り込んだ。両軍は集落を挟んで睨み合い、どちらも一歩も引こうとしなかった。

爆発はその最中に起きた。集落の中央から広がった光と衝撃は両軍の陣営を呑み込み、双方に死者を出した。ホロウデルの中央に今も残る黒く焼け焦げた円い跡は、あの日の爆発によって生じたものだ。

「どちらの兵器でもなかった」

当時スカベンジャー互助会の一員だった現ギルド長、ハルド・ベルクは、報せを受けて仲間とともにホロウデルへと駆けつけた。

「着いたときには、地面がまだ熱を持っていた」

両国はすぐさま、相手が新兵器を使ったのだと非難し合った。だが、ハルドは今もその説明に納得していない。

「あの日は目に付くすべてが焼けていた。そんな兵器を味方に打ち込む馬鹿がどこにいる?」

盆地協定の誕生

ホロウデルの惨事は三国を震撼させた。盆地で軍が衝突すれば、その被害は計り知れない。二国が争って疲弊すれば、残る一国が利を得るだけだ。共倒れを恐れた三国は、その年のうちに「盆地協定」を結んだ。

協定が定めた柱は三つ。盆地はいずれの国も領有しないこと。正規軍の進駐および国家間の武力衝突を禁じること。そして違反した国には、残る二国が共同で経済制裁を科すことである。

条文には三国それぞれの思惑が滲む。制裁を受ければ真っ先に飢えるアイゼン連合王国は、食糧と医薬品を制裁対象から外す条項を強く求めた。一方、アイゼンの兵力を抑えたいヴェルデン連邦とオルデリア王国は、正規軍の進駐禁止を要求した。盆地の街道を三国に開放する条項はアイゼンの、旧帝国金貨の規格を共通通貨とする条項はオルデリアの成果とされる。

もっとも、この協定は各国に領有権を放棄させたわけではない。主張はそのまま凍結され、協定が続く間はいかなる活動も領有の根拠として認められない。それでもなお、三国は今も盆地内の拠点を拡張し続けている。

ギルドの誕生

協定は、もうひとつの存在を生み出した。「冒険者ギルド」である。

スカベンジャー互助会は協定と同時に三国の特許状を受け、中立の職能団体として公認された。登録した冒険者は盆地に滞在する間、三国の国籍を離れた「中立民」として扱われ、国境を越えて依頼を受けることができる。三国がギルドを認めたのは、会員たちの活動記録が協定違反を認定するための証拠になり得るからでもあった。

28年目のホロウデル

「協定からもう28年か。盆地で育った若い連中には、兵士が睨み合っていたあの頃の様子など想像もつかないだろう。それでいいんだ」

ハルドはそう笑ったあと、少し間を置いて言葉を継いだ。

「だが、静かな時代が長く続くと、人はその静けさを当たり前のものだと思い込んでしまう。あの日だって、爆発の前の晩までは静かなものだった」

放棄されたホロウデルは現在、亡者のさまよう危険地帯となっている。調査や討伐で足を踏み入れる冒険者は、万全の備えで臨んでほしい。

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